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[転載]中国海軍の艦艇部隊による太平洋への進出回数が近年増加傾向にあり、当該進出は現在も高い頻度で継続している

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中国の海洋における活動
(1)全般
近年、中国は、より遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指していると考えられ、その海上戦力及び航空戦力による海洋における活動を質・量ともに急速に拡大させている。特に、わが国周辺海空域においては、艦載ヘリの飛行や陣形運動など、何らかの訓練と思われる活動や情報収集活動を行っていると考えられる中国の海軍艦艇65や海・空軍機、海洋権益の保護などのための監視活動を行う中国の海上法執行機関66所属の公船や航空機が多数確認されている67

このような中国の活動には、わが国領海への中国公船による断続的侵入や領空の侵犯のほか、火器管制レーダーの照射や戦闘機による自衛隊機への異常な接近、「東シナ海防空識別区」の設定といった公海上空における飛行の自由を妨げるような動きを含め、不測の事態を招きかねない危険な行為を伴うものもみられ、極めて遺憾である。中国は「法の支配」の原則に基づき行動することが求められる。
(2)わが国周辺海域における活動の状況
海上戦力の動向としては、中国海軍の艦艇部隊による太平洋への進出回数が近年増加傾向にあり、当該進出は現在も高い頻度で継続している68。この際、中国海軍の艦艇部隊は、08(同20)年以降、毎年複数回、沖縄本島と宮古島の間の海域を通過しているほか、12(同24)年以降、毎年大隅海峡や、与那国島と西表島近傍の仲ノ神島の間の海域を通過している。

また、15(同27)年3月には、奄美大島と横当島(よこあてじま)の間の海域を西進した。さらに、08(同20)年10月及び16(同28)年2月には津軽海峡を、また、13(同25)年7月、14(同26)年12月、15(同27)年8月には宗谷海峡を通過するなど、わが国の北方を経由した活動も定期的に実施されるようになってきている。このように、中国海軍の艦艇部隊による太平洋進出・帰投ルートは、わが国の北方を含む形で引き続き多様化の傾向にあるなど、外洋への展開能力の向上を図っているものと考えられる。また、13(同25)年10月には、西太平洋で初となる海軍三艦隊合同演習「機動5号」が実施されたほか、14(同26)年12月にも、同様の三艦隊合同演習が実施されたとみられる69


このほか、東シナ海においては、継続的に中国海軍艦艇が活動しているとみられており70、中国側は尖閣諸島に関する中国独自の立場71に言及したうえで、管轄海域における中国海軍艦艇によるパトロールの実施は完全に正当かつ合法的である旨発言している。

13(同25)年1月には、中国海軍艦艇から海自護衛艦に対して火器管制レーダーが照射された事案や、中国海軍艦艇から海自護衛艦搭載ヘリコプターに対して同レーダーが照射されたと疑われる事案が発生している72。また、16(同28)年6月、中国海軍のジャンカイI級フリゲート1隻が、尖閣諸島周辺のわが国接続水域内に入域した。中国海軍戦闘艦艇による同接続水域内への入域は初の事案である。

さらに、近年、中国海軍情報収集艦による活動も複数確認されている。15(同27)年11月、尖閣諸島南方の接続水域の外側の海域で、同年12月及び16(同28)年2月には、房総半島南東の接続水域の外側の海域で、それぞれ中国海軍ドンディアオ級情報収集艦(AGI)1隻が往復航行を実施した。また、同年6月には、同型情報収集艦1隻が、口永良部島(くちのえらぶじま)及び屋久島付近のわが国領海内を航行した後、北大東島北方の接続水域内を航行し、その後、尖閣諸島南方の接続水域の外側を東西に往復航行した。

中国海軍艦艇による領海内航行は約12年ぶりである。このように、最近、尖閣諸島に関する独自の主張に基づくとみられる活動の推進をはじめ、中国海軍艦艇が尖閣諸島を含めてその活動範囲を一層拡大するなど、わが国周辺海域における行動を一方的にエスカレートさせており、強く懸念される状況となっている。


16(平成28)年5月に上部構造物の設置が確認された海洋プラットフォーム第12基
16(平成28)年5月に上部構造物の設置が確認された
海洋プラットフォーム第12基


中国公船の動向としては、尖閣諸島周辺のわが国領海において、08(同20)年12月に「海監」船が徘徊(はいかい)・漂泊といった国際法上認められない活動を行った。また、10(同22)年9月には、尖閣諸島周辺のわが国領海において、わが国海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突事件が生起している。その後も、11(同23)年8月、12(同24)年3月及び同年7月に「海監」船や「漁政」船が、当該領海に侵入する事案が発生している73。このように、「海監」船及び「漁政」船は、徐々に当該領海における活動を活発化させてきたが、12(同24)年9月のわが国政府による尖閣三島(魚釣島、北小島及び南小島)の所有権の取得・保有以降、このような活動は著しく活発化し、当該領海へ断続的に侵入している。

13(同25)年4月及び9月には、当該領海に同時に8隻の中国公船が侵入した。同年10月以降は、領海侵入を企図した公船の運用状況74からルーチン化がみられている。そのため、運用要領などの基準が定まった可能性も考えられる。


また、15(同27)年12月26日以降、機関砲とみられる武器を搭載した公船75がわが国領海に繰り返し侵入するようになっている。このほか、尖閣諸島近海に派遣する公船は大型化が図られており、14(同26)年8月以降、わが国領海に侵入してくる公船のうち、少なくとも1隻は3,000トン級以上の公船である。

また、15(同27)年2月には、初めて3,000トン級以上の公船が3隻同時にわが国領海に侵入した。さらに、中国は世界最大級となる1万トン級の巡視船の建造も進めており、既に2隻76が試験航行を実施したとされている。このように、中国公船によるわが国の領海侵入を企図した運用態勢の強化は着実に進んでいると考えられる。


なお、12(同24)年10月には、中国海軍東海艦隊の艦艇が「海監」船や「漁政」船と領土主権及び海洋権益の維持・擁護に着目した共同演習を実施し、海軍の退役艦艇を13(同25)年7月に正式に発足した中国海警局77に引き渡しているとみられるほか、14(同26)年にも海軍と「海警」の連携訓練や海軍と「海巡」の共同訓練「海神2014」が行われるなど、海軍は、運用面及び装備面の両面から海上法執行機関を支援しているとみられる。


参照図表I-2-3-4(わが国周辺海域における最近の主な中国の活動)
図表I-2-3-4 わが国周辺海域における最近の主な中国の活動(航跡はイメージ)
(3)わが国周辺空域における活動の状況
近年、中国海・空軍の航空機によるわが国に対する何らかの情報収集と考えられる活動が活発にみられるようになっており、近年、空自による中国機に対する緊急発進の回数も急激な増加傾向にある78

航空戦力の東シナ海上空における動向としては、07(同19)年9月、複数のH-6爆撃機が、また、10(同22)年3月には、Y-8早期警戒機が、東シナ海上空においてわが国の防空識別圏に入り日中中間線付近まで進出する飛行を行ったほか、11(同23)年3月には、Y-8哨戒機及びY-8情報収集機が、日中中間線を越えて尖閣諸島付近のわが国領空まで約50kmに接近する飛行を行うなど、飛行パターンも多様化している。12(同24)年には戦闘機を含む中国機による活動も活発化した。

13(同25)年1月には、中国国防部が東シナ海における中国軍機による定例的な警戒監視及び同軍戦闘機による空中警戒待機(CAP:Combat Air Patrol)とみられる活動の実施について公表を行った。また、同年の中国の国防白書では、空軍による海上空域での警戒パトロールに関する記述が新たに追加された。


同年11月23日、中国政府は尖閣諸島をあたかも「中国の領土」であるかのような形で含む「東シナ海防空識別区」を設定し、中国国防部の定める関連の規則に従わない場合は中国軍による「防御的緊急措置」をとる旨発表した79

同日、Tu-154情報収集機及びY-8情報収集機がそれぞれ東シナ海を飛行しており、中国空軍は、当該防空識別区設定後、初のパトロール飛行を実施した旨公表している。また、同年12月26日には、当該防空識別区設定後の1か月で、中国軍は関係空域に偵察機、早期警戒機、戦闘機を51回、延べ87機出動させた旨公表している。


また、11(同23)年3月、4月及び12(同24)年4月には、東シナ海において警戒監視中の海自護衛艦に対して、中国国家海洋局所属とみられるヘリコプターなどが近接飛行する事案が発生している80

さらに、14(同26)年5月及び6月には、東シナ海において通常の警戒監視活動を行っていた海自機及び空自機に対して、中国軍のSu-27戦闘機2機が異常に接近する事案が発生している81

中国国防部は、自衛隊の航空機が中国側の航空機に対し危険な行為を行ったなどと発表しているが、いずれの場合も、自衛隊機による活動は国際法にのっとった正当なものであり、自衛隊機が危険な行為などを行ったとの事実は一切ない。


航空戦力の太平洋への進出については、13(同25)年7月にY-8早期警戒機1機が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出したことが、空自の対領空侵犯措置により初めて確認された。昨年(15(同27)年)も、2月には、Y-9情報収集機1機が2日連続で、5月には、H-6爆撃機2機が、7月には、Y-9情報収集機1機、Y-8早期警戒機1機及びH-6爆撃機2機の計4機が2日連続で、また、11月には、H-6爆撃機4機、Tu-154情報収集機1機及びY-8情報収集機1機の計6機82が、それぞれ同様の飛行を行った83。さらに、16(同28)年1月末には、Y-9情報収集機1機及びY-8早期警戒期1機の計2機が対馬海峡を通過し、初めて日本海で活動した。このように、中国機による活動はさらに活発化している84
沖縄本島と宮古島間を通過して太平洋へ進出したH-6爆撃機(15(平成27)年11月27日)の画像
沖縄本島と宮古島間を通過して太平洋へ進出した
H-6爆撃機(15(平成27)年11月27日)

尖閣諸島及びその周辺上空のわが国領空については、12(同24)年12月に、中国国家海洋局所属の固定翼機が中国機として初めて当該領空を侵犯する事案が発生し、その後も14(同26)年3月までの間、同局所属の固定翼機の当該領空への接近飛行がたびたび確認された85。また、最近では中国軍用機が南下するといった尖閣諸島近傍での活動の活発化も確認されている。16(同28)年6月、航空自衛隊戦闘機が尖閣諸島方向に南下飛行した中国軍機に対し、対領空侵犯措置を行ったことに関し、中国国防部は自衛隊機が中国軍機に対して挑発を行ったなどと公式発表86を行った。しかしながら、自衛隊機は国際法及び自衛隊法に基づいて対領空侵犯措置を実施しており、中国軍機に対して挑発的な行為をとったという事実は一切ない。最近の中国軍用機による尖閣諸島近傍における活動について、今後も強い関心をもって注視していく必要がある。


参照図表I-2-3-5(中国機に対する緊急発進回数の推移)、図表I-2-3-6(わが国周辺空域における最近の中国の活動)
図表I-2-3-5 中国機に対する緊急発進回数の推移


図表I-2-3-6 わが国周辺空域における最近の中国の活動(航跡はイメージ)

転載元: 海上保安、国土防衛、美しい日本を私たちが行動して守りましょう


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